【ツッコミ】統計操作すれば、都合よく・・・

ツッコミを再開すると、とめどなくツッコミのネタが湧き出てくるわけですが、本日のお題は、「J-CASTニュース 」さんが、公務員の退職金を記事にしたものです。
今回の場合、先に言ってしまうと、統計を都合よく加工して、公務員の退職金と民間の退職金を比較するというものです。

公務員は退職金も高すぎるぞ 2013年度にも引き下げへ
J-CASTニュース 10月19日(水)19時12分配信
http://www.j-cast.com/s/2011/10/19110511.html?ly=cm&p=1

人事院が行った05年度の実態調査によると、民間企業で20年以上勤務した人の退職一時金と生涯に受け取る企業年金額の合計は、1人あたり2980万円。これに対して国家公務員は、退職手当と上乗せ年金に当たる「職域加算」を合計すると、計2960万円。このことから、人事院は「民間と公務員の退職給付は同水準」との主張を続けてきた。(中略)

↓ 人事院の調査資料はこちら。
http://www.jinji.go.jp/nenkin/nenkintop.htm

職域加算の廃止で、241.6万円、民間側が高くなるとも書いていますが・・・

だが、このデータには、大きく2つの「カラクリ」があるとされる。ひとつが、その内訳だ。民間は退職一時金が1445万円で企業年金が1535万円。ほぼ半分ずつなのに対して、国家公務員には退職手当が2740万円で職域加算が220万円と、大きく内容が異なっている。

別に、カラクリでもなんでもありません。
退職一時金も、(企業が負担する)企業年金も、税法上は、同じ扱いです。
ぶっちゃけ、受け取る側としては、倒産リスクの少ない、企業年金のほうが、有利な制度ではないかと思いますが。

ぁ。
もしかして、企業年金=任意の個人年金と、勘違いしているのではないでしょうか?
企業年金=事業所負担が、基本なんですけど。
まさかねぇ・・・

まぁ、従業員に負担を求める事業所も、少数ながら存在しますが。

自民党の河野太郎衆院議員などが2010年に、
「企業年金が無く退職一時金のみを支給している民間企業の退職一時金と、国家公務員の退職手当を比較したらどうなるか」
についての調査を人事院に依頼したところ示された結果は、民間の退職一時金が2420万円なのに対して、国家公務員の退職手当は、前出のとおり2740万円というもの。国家公務員の方が300万円以上高いという「官民格差」が浮き彫りになっている。

比較する意味がわかりません。
民間の事業所では、退職一時金の制度と企業年金の制度が、ほぼ同じ税制の下で併存しているのですから。

上記資料では、
企業年金と退職一時金を併用:44.0%
企業年金のみ:14.5%
退職一時金のみ:41.5%
・・・となっています。

退職一時金だけという特殊例を抽出して、比較の元ネタにする理由がわかりません。
退職一時金を減らし、企業年金に代替すべきというのであれば、それはそれで、納得できるのですが。 

二つ目が、人事院が調査対象にしている民間の会社は、従業員が50人以上いる事業所に限られているという点だ。06年の「事業所・企業統計調査」(総務省統計局)によると、国内の民間事業所のうち、50人以上従業員がいるのは全体の2.6%。これらの事業所に勤務する従業員数ベースで見ても、全体の37.9%しかカバーされていない。

そ れ が 何 か ?

比較対象を総体にせよという理屈が間違っているとしか言いようがありません。

中小零細以下の企業と官公庁の事後所規模を考えれば、当然です。
最小規模の村役場ですら、中小企業中位以上の規模があります。
並の市役所であれば、数百人を擁する事業所です。

冷たいようですが、上位37.9%が適当かどうかはともかく、中小零細企業と官公庁を比較することについては、非合理であるとしか言いようがありません。

実際、事業所の規模が小さくなると、退職金の額は大きく下がる。

わかっていて、言ってたんですか・・・

つまり、事業所規模の大きな官公庁が中小零細企業より、退職金受給額が多くて当然であると、記事の中で説明してくれているわけです。
ナンダソレ・・・

厚生労働省が、従業員が30人以上いる民間企業を対象に行った「就労条件総合調査」によると、07年に定年を迎えた大卒社員の退職金(勤続20年以上)は2026万円。この調査によると、97年が2868年、02年が2499万円で、「右肩下がり」が続いている。

ちょっと待った。
なんで、勤続20年以上なの!?


http://www.mhlw.go.jp/toukei/itiran/roudou/jikan/syurou/08/3d.html
↑これが、記事の元ネタ統計です。

公務員の場合、採用年齢の制限があるので、基本、勤続30年以上の民間企業と比較しないと、意味がありません。

まぁ、種明かしをすると、前述の官民比較において、人事院も「民間は20年以上」で、比較しているわけで、J-CASTさんが、別の統計を見ずに、人事院の資料だけで記事を書いたと推測できそうです。
というか、わざわざ人事院も、20年以上にして、気を使っているのかなぁw

これは、民間の給料が下がっているのと連動しているためだ。これに対して、国家公務員の退職手当は03年以降改定されておらず、ほぼ横ばい。この点でも、格差が指摘されている。

はぃ?
公務員の退職金も給与に連動していますよ。
つまり、公務員給与が削減されているので、公務員の退職金も、削減傾向にあるわけです。

退職手当の制度が改正されなくても、自動的に退職手当は削減されてますよ・・・と。

人事院は11年10月3日、民間企業約6300社に対して、退職給付の水準について調査を行うことを発表した。調査は10月11日から11月30日にかけて行われ、調査結果は11年度末にもまとまる見通し。この結果を踏まえて、12年春の通常国会に関連法案を提出し、13年度からの引き下げを目指す。

こりゃ、完全に飛ばし記事ですね。
人事院は、同じ事業所規模の民間事業所を、官公庁の類似事業所として、公務員の給与等の待遇を示します。

人事院が、本気でこの記事が求める程度に退職金の整合性を調査するなら、公務員退職金の半分が、企業年金となる制度が構築されるでしょう。

それが、本来的な意味での「官民準拠」です。

ついでに言うとこの記事がネタにした人事院の報告書(前述のURL参照)は、退職給付制度について「民間との較差を埋める措置が必要」と指摘し、「最終給与に対する年金の支給割合の引上げ」が必要であるとも書いています。

以上、このJ-CASTの記事は、統計情報を都合の良いように情報を加工したもので、一種のミスリードと言えるでしょう。

記事構成から考えると、最後の部分を書くために、少々古い統計情報を探し出してきて、それを加工し、最後の部分の正当性を担保しようとしたようですが、ちょっと、強引ですね。

公務員は、国民に監視され、批評されねばならない存在ですが、その情報を国民に提供すべき報道機関が、情報を細工して提供しているようでは、話になりません。
そのあたり、J-CASTさんには、基本に立ち返ってほしいと思います。

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この記事へのコメント

秘匿希望。
2011年10月27日 23:22
あ~なるほど。
「退職手当法の規定=退職手当の計算式が変わってない」と雖も、その計算式に渡す引数の値(俸給額)が下がってれば、計算式の戻値となる退職手当の額も下がるわな、そりゃぁ。
で、俸給の月額は実際に下がってるんだから、退職手当の支給額も下降してると。

ところで、「職域加算額の減資は、労使折半」なんですけど、「職域加算額が全額税金」って誤解は結構あるみたいですね、いや私の印象にすぎませんけど。
企業年金は、殆どの場合「減資は事業主が全額負担」なんで、人事院は「職域加算額の半分(雇い主の負担分)と企業年金の全部(雇い主の負担分」を比較してるんですけどねェ。

もう一つ、「所謂”追加費用”が職域加算額の原資を指してる」という誤解も多いようですね、これも私の印象論。某週刊誌でもそういう記事が出てましたし、某総理大臣も誤解した答弁をしてましたし。

所謂「追加費用」というのは、制度の歴史的経緯から、在職中に恩給対象期間と共済年金対象期間の両方がある人について、
(恩給納付金はあっても共済掛金の徴収はなかった)恩給対象期間に対応する部分は、
恩給制度同様に支給原資を用意するという主旨のもの。
決して「職域加算額」の原資という目的で支出されてるものでは無いんですけどね。
革命烈士
2011年10月28日 07:43
管理人のほうが噓をついている。

”事業所”とは、職場の建物の単位である。
つまり、どんな大企業であっても、従業員が10人の”支店・支社”は、50人未満の”事業所”としてカウントされる。

これを役所に当てはめてみると、中央官庁であっても農水・国交を中心に零細事業所が各地に存在するし、まして地方自治体レベルなら珍しくもないだろう。

つまり、「職場の規模から零細と公務員を比較するのは誤り(キリッ」 という考えこそ誤りだ。

管理人は捏造記事を撤回して謝罪したほうがいい。
革命烈士
2011年10月28日 07:46
身近な例で悪いんだけど、
離島の学校や役場には50人もの職員なんて到底、常駐させれません。こういう”事業所”は公務員として認められないんですかね。
革命烈士
2011年10月28日 20:58
国家公務員給与8%削減が閣議決定!

いよいよ国会での戦いだ。

人民戦争だ!

市民軍 vs. 官僚軍
革命烈士
2011年10月28日 21:00
政治は戦争だ!

民衆の総力を結集して役人利権を粉砕しましょう。
秘匿希望。
2011年10月28日 22:01
え~と、個人的には文意は伝わるので、どこまでの非難に値するかどうかは、個人の感性の問題でしょうけど、事実関係を申し述べるとすると。

確かに、人事院の調査は報告書にもあるとおり、「企業の規模」であって、「事業所の規模」ではないのは事実のようですねぇ。
複数の事業所を有する企業の場合は、事業所単位では無くて、その企業の従業員規模で、較差の対象を選出してる。ということ。

※一応、「事業所」という言葉の法律上の定義は、法律ごとに微妙に異なってて、何を以て「事業所」と言うのかは、法律ごとに臨機応変ではあります。
日常用語としても、狭義から広義までいろいろな意味の取り方がありますし。
とはいえ、この主題では、「企業の従業員規模」と言った方が正確かな。。。という気はしないでもありません。
2011年10月29日 00:43
管理人さんです。

確かに正確に言えば、
「企業規模50人以上で事業所規模50人以上」
・・・が正解ですね。

ただ、それで、統計の本旨も本文の趣旨が変わるとも思いません。
同様に、民間側も大規模企業の零細支店も除外されること、また、自治体の平均人口6万人に対して、500人規模の職員が存在し、その大半が本庁勤務というのが、現在の実情ですので、総体的な問題にはならないと判断できます。

勧告自体も、例年約5万の事業所が抽出分母に対して、自治体数が1600ですので、相対的に指摘された問題はクリアされていると思います。

なお、学校ですが、確かに、事業所規模50というのは、それなりの規模の学校であり、この趣旨から考えると微妙なところがあります。

で、そのうえで、問いかけたいのですが、その理屈で行って、学校の先生のお給料を、一般行政事務の職員より、安くていいのかな・・・と。

以上、本文訂正に替わって、コメント欄にて失礼します。
2011年10月29日 00:45
管理人さんです。

削除の事前警告を行った宣伝コメントを1件、削除しました。
秘匿希望。
2011年10月29日 05:00
まず、管理人様のエントリ本文での論旨には、全くの賛成です。同じく、コメント(2011/10/29 00:43分)の論旨には、これも賛成します。(^o^)/

その上で、直近の私のコメントの補足。
まず私は、一つの企業に複数の事業所がある場合を鑑みて、(企業≠事業所)という前提をおいてます。
また、通常の官民較差は今回念頭に置いていません。

当該の私のコメントにおいては、人事院の「平成18年民間企業退職給付調査」は、企業規模(≠事業所規模)50人以上という条件で、層化無作為抽出されたという事を前提にしています。
また、「平成20年就労条件総合調査結果の概況」に関しても、常用労働者が30人以上の民営企業から抽出された企業が調査の対象であったので、企業規模(≠事業所規模)と解しています。
※この調査、平成19年までは、「本社の常用労働者が30人以上の企業」でしたが、平成20年から「全体として30人以上の企業」に改められてます。即ち調査対象が拡大された。

んで、「企業の規模」を調査の対象にしているのだから、公務組織の側も「省庁の規模or自治体の規模」でもって論じれば足りるだろう。
民間の企業だって、企業(≠事業所)単位で退職給付は決まるだろうし、公務員だって国とか自治体の単位で決まってるんだから。

そもそも、粒度として、同一企業の各事業所と省庁or自治体の各出先事務所という単位まで考える必要があるだろうか?
秘匿希望。
2011年10月29日 05:27
と言うわけで、私の脳内で、
エントリ本文中「事業所」とあるのは、「企業」と読み替える。とか、
エントリ本文中「事業所」とあるのは、「企業」をいう。とか、、、
そういう脳内前処理を行うと、理屈そのものは間違ってないと想うんですのん。
秘匿希望。
2011年10月29日 05:59
書き忘れた。「事業所」の定義の問題。

私としては、
「企業」と「事業所」の違い
「事業者」と「事業所」の違い
が、気になっていて、上記2種の調査は「企業」という粒度であって、「事業所」という粒度では無いと解しています。

私の場合は、「事業所」と聞くと、労基法・健保法・厚年法の定義を連想してしまうんで、「ひとつの企業=ひとつ又は複数の事業所の集合体」という認識から逃れられてないんでしょうね。

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